略歴
野村 達次
生年月日
1922年(大正11年)5月15日 |
学歴
1945年9月 |
慶應義塾大学医学部 卒業 |
学位
1956年 |
医学博士 細菌学(感染論)専攻 |
職歴
1949年~1954年 |
東京大学伝染病研究所研究員 |
1952年 |
実験動物中央研究所 創立 |
1966年~2013年 |
(公財)実験動物中央研究所 所長 |
1981年~2013年 |
慶應義塾大学医学部 客員教授 |
2006年~2013年 |
(公財)実験動物中央研究所 理事長 |
団体役員歴
1971年~2003年 |
国際実験動物会議(ICLAS) 日本代表 |
1988年~2013年 |
国際実験動物会議(ICLAS) 名誉会員 |
1995年~2003年 |
国際実験動物会議(ICLAS) 理事・副会長 |
1997年~2013年 |
(社)日本実験動物学会 名誉会員 |
審議会委員等
1982年~1998年 |
日本学術会議実験動物研究連絡委員会 委員長 |
1984年~1996年 |
国立遺伝学研究所 評議員 |
受賞歴・表彰歴
1965年 |
小島三郎記念文化賞 |
1975年 |
日本医師会最高優功賞 |
1984年 |
紫綬褒章 |
1988年 |
ICLAS ミュールブック記念賞 |
1992年 |
吉川英治文化賞 |
1997年 |
文化功労者顕彰 |
1998年 |
勲二等瑞宝章 |
1998年 |
アメリカFDA(食品医薬品局)医薬品評価研究センター |
2000年 |
アメリカFDA(食品医薬品局)生物製剤評価研究センター |
2001年 |
タイ マヒドン大学 名誉学位(Honoris Causa) |
2005年 |
ICLAS Marie Coates 賞 |
2013年 |
正四位 叙勲 |
野村達次先生の歩み
実験動物中央研究所の誕生
1947年 |
野村達次先生のご母堂増子と姉君美智子が大磯の野村邸でマウスの飼育を開始。 |
1951年 |
安東洪次・田嶋嘉雄両博士とともに実験動物研究会の設立にかかわる。 |
1952年 |
実験動物中央研究所を東京・西多摩に設立。 |
実験動物の供給に至るまで
1957年 |
実験動物中央研究所が文部科学省直管の財団法人として認可。 |
1962年 |
川崎市野川にSPF 動物生産施設を完成。SPF マウスの種親を米国より輸入して、野川でSPF マウスの生産を開始。翌年より供給を開始。 |
発展
1964年 |
SPF 動物の飼料・環境統御および微生物検査法を確立。SPF マウス月産2 万匹達成。SPFラット供給開始。 |
1966年 |
無菌動物の繁殖・飼育成功。 |
1979年 |
ICLAS モニタリングセンターに指定される。 |
1982年 |
発生工学研究室を新設し、遺伝子組換え動物作出の方向性を打ち出す。 |
さらなる地平を切り拓く
1988年 |
シバラーマウスの遺伝子病解明に世界で初めて成功。この年、文部省研究補助金により「実験動物モニタリング事業」を開始。 |
1991年 |
ポリオマウスによる生ワクチン検定系を作出。1993年にWHO がポリオマウスをポリオ根絶に活用することを決定。 |
1995年 |
日米EU医薬品規制調和国際会議(ICH)において短期発がんモデルrasH2 マウスを発表。 |
2002年 |
海外事業展開を開始。『究極の免疫不全マウス』と評されるNOG マウスの作出に成功。 |
2005年 |
本研究所でヌードマウスに移植したヒト腫瘍で観察された白血球増多現象をもとに、中外製薬が開発した白血球減少症治療薬のノイトロジンが世界市場に送り出される。 |
2009年 |
世界で最初の霊長類遺伝子改変マーモセットの作出に成功。 |
2011年 |
公益財団法人に認定される。 |
2013年1月11日 御逝去 |
医学への実際の貢献
新薬開発の日本発世界標準システムの開発
ポリオ経口ワクチンの安全性確認に用いるポリオマウスは、WHOの推奨のもと世界中のワクチンメーカーに使われており、WHOポリオ撲滅プログラムに貢献しています。医薬品による発がんリスクを調べるrasH2マウスも日米欧の規制当局から認定され、新薬開発に活用され、新薬開発の期間、コストが圧縮される効果とともに、動物使用数の削減に大きく貢献しています。
医療技術・新薬開発の最先端研究ツールの開発
iPS細胞など画期的な再生医療技術に期待が寄せられています。本研究所では、超免疫不全のNOGマウスや小型霊長類コモンマーモセット等を開発し、これら最先端の医療・医学研究を支えています。すなわちNOGマウスでは、ヒトの正常あるいは病気の細胞・臓器を有するヒト化動物が開発され、新しいヒト疾患モデルへの応用、コモンマーモセットでは、パーキンソン病や脊髄損傷といった人間の高次機能に関わる病気や筋萎縮性側索硬化症等の難病のモデルを開発し、これらに対する再生医療技術の実現のために研究が行われています。
野村達次先生と実験動物学、そして医学への貢献
野村達次先生は、終戦のころ、感染論を研究する医学研究者でした。その当時の実験動物の品質に疑問を抱き、日本の実験動物の水準を上げることで日本の医学研究全体の水準向上に貢献しようと決心し、1952 年に実験動物中央研究所を設立しました。それ以来、医学の発展と生活の質向上を目指して、人類の健康問題解決に直結する疾患モデル動物の開発と供給体制の確立に取り組み、併せて、その基盤となる実験動物の品質管理とモニタリングシステムの概念を樹立しました。
また、国際的にも実験動物学の分野でも大きな影響を与えてきました。国内外の研究機関と活発に共同研究を行うだけでなく、世界保健機関(WHO)、米国国立衛生研究所 (NIH)、米国食品医薬品局(FDA)、国際実験動物学会議(ICLAS) などと協調しながら、世界に向けて実験動物学の概念の提唱を始め、大きなリーダーシップを発揮しました。
ヒトの病気を熟知した医学研究者と協働しながら、有用なインビボ(in vivo) 実験システムを開発し、より有用で、より精度・再現性が高い実験システムを提供することを生涯実践しました。