御挨拶
会長挨拶
野村達次博士は慶應義塾大学医学部の24回生です。博士は平成25年1月11日にご逝去されましたが、実験動物中央研究所の理事長、所長として終始一貫、医学の発展のために欠くことのできない良質の実験動物の創出と、plurality standard とreproducibility を追求できる包括的な動物実験システムの確立に一生を捧げられました。そのルーツは1947年、 ご母堂の野村増子さま、姉君の美智子さまが大磯の野村邸でマウスの飼育を始めたことに端を発していることはあまりにも有名ですが、動物実験学のボトムアッ プを図るための苦闘の歴史を経て、独立自尊の精神そのままに苦難を克服し、世界に冠たる動物実験システムを創出されてきました。慶應医学会は「In vivo実験医学」を長年に亘り牽引されてきた博士のご業績を永くたたえるため、「野村達次賞」を創設しました。野村博士は常に「明確な臨床を見据えた動物実験医学の展開」にこだわり続けた研究者でした。賞の創設を契機に、In vivo実験医学がさらに発展し、真に世界に真価を問う斬新な医学研究が発展することを願って止みません。
慶應義塾大学医学部長 金井 隆典
野村達次先生 御子息 御挨拶
この度は伝統ある慶應医学会に野村達次賞を創設頂けることとなり、野村家並びに公益財団法人 実験動物中央研究所を代表して深く御礼申し上げます。
野村達次は2013年1月11日に心不全により90歳で永眠致しましたが、慶應義塾大学医学部からは最後まで客員教授の肩書を頂き、常に慶應義塾の一員として人類の健康に貢献する研究を続けているという気持ちを励みに、生涯現役を貫けたものと大変感謝しております。
野村達次は1945年に慶應義塾大学医学部を卒業後、感染症を中心に研究を続けておりましたが、実験動物の質の低さの結果として、医学研究のレベルが向上しない事に気付き、一念発起して1952年に実験動物中央研究所を設立いたしました。世界最高の動物実験システムの構築を目指して仕事に全力を傾けて参りました。種々の困難を乗り越え、今では世の中に認めて頂ける仕事になり、一人の人間として夢をかなえられた本当に幸せな人生だったと思います。
最近では、本研究所と慶應義塾大学医学部は、連携大学院協定の下で、ヒト化マウスの確立、遺伝子改変マーモセットを用いたヒト疾患モデル動物の開発、そして脊髄損傷モデルマーモセットを用いた治療実験等、医学に貢献する数多くの成果をあげて参りました。今後も野村達次の遺志を引き継ぎ、この共同研究体制を継続させて頂いて、医療の発展と人々の健康・福祉の向上に貢献していきたいと考えております。
「人のやらない事をやれ」、「妥協するな」、「世界で戦え」が野村達次の本当に最後の言葉でした。医学を志す者、研究を行う者だけでなく、人の生き方全体に通じる話だと思います。この想いを皆様と共有し、この度創設して頂きました野村達次賞を通じて後世に伝えて行くことが出来れば、本人にとって、また家族として、本研究所としてこの上ない喜びでございます。
公益財団法人 実験動物中央研究所
理事長 野村 龍太